“長野県で看護師として働くことに決まった私は、都会の一人暮らし部屋から実家に帰ることにした。
「田舎暮らしいやだな…」
と大きくため息をついた私の横で母が小さく苦笑した。その顔にはしょうがないでしょ、と書いてあった。
昔からの夢だった看護師になりたいという意思を通して、反対した両親の反対を押し切り無理やり都会にある看護学校に入った私は、入学当初は卒業後、いずれは人材の需要が高い地方の病院に行くことを覚悟していた。やっぱり人手を必要としている場所で活躍しなきゃいけないなとは常々思っていたのだ。でも、最初に就職した病院に勤めながら、楽しい都会の一人暮らしに慣れきっていたため実際のところ思わずため息もつきたくなるというものである。
私が行くことになった病院は長野県の中でも田舎にあたる場所で、小さな診療所が少しあるだけの小さな村だ。
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看護学校にいた頃には地方の医療に力を入れたいと思っていたが、長い間楽しい都会の中で悠々自適な暮らしをしていた私にとって、田舎地方での暮らしに戻ることはなかなか困難なことだ。そんな考えの人間がたくさんいるから地方と都会の医療格差が広がっているのはわかってはいるが、それでも華やかな都会が好きだったのに、静かな田舎へ引っ越すことを喜べる人間はそうはいないだろう。都会の病院が忙しすぎて辞めた自分の決断ではあるのだが・・・。
せめてもの救いは、その小さな田舎が私の実家から近い場所にあることだ。実家から通える距離なのが唯一の慰めだ。これで一人暮らし時代より家事の面で楽できる・・・。
後日の引っ越し作業が終われば、その次の日から通常業務に入ることになっている。父親に看護師は大変だと散々言われ続けていたが、それでも意地を張って目指した道を、今若干後悔している。それでも、やめられない瞬間がきっと看護師にはあるはずだ!!
「がんばるぞ~~~~!」
と大きく伸びをした私に母が軽く笑った。愚痴を言いたいだけ言ってすぐに復活するのが今の私のスタイルなのだ。もう、慣れたものなのだろう。